第1章

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鈴懸村の道祖神に取り憑く幽霊、お結は浅見樹が大好きだ。 今日も樹がやってこないかと、道祖神にもたれかけて山と田んぼと畑ばかりの田舎風景を眺めていた。 「お結さん」 「あら、いちまっちゃん」 呪いの市松人形いちまっちゃんが遊びに来た。 いちまっちゃんの後ろには、いちまっちゃんと同じくらいの背丈のフランス人形が立っている。 金髪の長い髪。 青い目。 白い肌。 総レース編みの ロココ調ロングドレス。 フリルたっぷりの日傘をさしている。 『綺麗…』 お結は見とれた。 「いちまっちゃん。その方は?」 「ピヨタソちゃんよ。最近知り合ったの」 「ボンジュール」 ピヨタソは膝を少し折って腰を下げ、優雅に微笑んだ。 「こんにちは」 お結は普通に挨拶した。 いちまっちゃんは「旦那様は来た?」と訊いた。 「こないわね」 ピヨタソは訊いた。 「どなたの事?」 「浅見樹っていう男よ」 「お結さんの旦那様なのね」 お結は堂々と胸を張って言った。「ええ、そうよ」
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