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なるほど。
どうやら神族とメイドは魂の位相が近いらしい。これを証明することができればノーベル幽体科学賞は堅いな。そんな賞があるかどうかは知らないけど。
そんなことを考えつつ、僕とリリィさんはハトを追ってタバコ屋の角を曲がる。
しかし、極めて正確なハトの先導には驚かざるを得ない。およそ地域住民にしか知られてないような小道やら路地裏やらを経由し、僕らは徒歩における最短ルートで市民球場まで近づきつつあった。
「でもリリィさん、ハトがいるなら、別に僕はいらない子ですよね?そろそろ帰ってもいいですか?」
「ならん。ハトはあくまで先導役であり、この世界の理屈まではわからぬ。おぬしのような小間使いが私には必要なのだ」
「メイドさんに小間使い扱いされるとは心外ですが、まさかとは思いますけど決闘が終わるまで待てとか言わないですよね?」
「世界が救われる瞬間に立ち会えるのだぞ。それを見逃す以外の手があるのか?むしろ光栄に思うがよい」
「はぁ。それは光栄といいますか、いい迷惑といいますか」
ううむ。リリィさんと話せば話すほど、ますます厄介なことに巻き込まれていく気がする。
もしこれがむさ苦しい男からのお願いであればソッコーで断るところだけど、リリィさんの長い髪から漂うなんとも言えない甘い香りが、僕が足を止めることを許さない。
『甘い匂いに誘われたあたしはかぶとむし』
昔、どっかの誰かがそんな歌を歌ってたな。今の僕がまさにその心境だ。
さてそうなると問題は、今から行われるというその『決闘』の内容である。
「リリィさん、あの、参考までにお聞きしたいのですが、決闘っていつも大体何分ぐらいで終わるものなんでしょう?」
「決闘方法によりまちまちだ。長ければ一年以上はかかる」
「マジですか。さすがにそんなには待てないですよ。今日はもっと早く終わるような決闘にしませんか」
「決闘の方法はいつもグランから提案されるのだ。私はただ、それを受けて立つのみ。だがそう心配するな。いつだったか、神聖遊戯『アッチ・ムウィテ・フォイ』の時は三秒で終わった。稀にそういうこともある」
その神聖遊戯とやらのルールが激しく気にはなったものの、したり顔でウンウンと頷くリリィさんに詳しく聞くのもなんだか怖かったのでやめておくことにした。
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