◆ ナーフェルにて

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アークの民の生活を取り戻す為に長であったノアの父親が、研究の為にアークを訪れていたカナダの海洋生物学の研究チームに助けを求めた。 そのメンバーの中にいたリラの両親が、積極的に本国へ協力を呼びかけた結果、カナダとアークとの共同でアークに海洋生物研究所が作られる事となる。 アークの海には、多くの水生ほ乳類がいる。イルカ、シャチ、クジラ――それからイッカク。 流氷の海にいる事の多いイッカクがフィヨルドに入り込んでくるのもこのアークの大きな特徴であるが、そのまだあまり知られていない生物の調査は非常に困難を極めていた。だからこそ、アークの全面的な協力が受けられるというのは研究者たちにとって大きな利点だったようだ。 そうして海洋生物研究所が建った年の冬、初めての大がかりな調査が行われることとなる。その調査チームのリーダーがリラの両親だったのは、偶然ではない。ノアの父親が彼らなら信用できると指名したからだ。 もし、それがリラの両親でなけれは何かが変わっていたのだろうか。 リラの赤い頬を眺めながら、ノアはまだ小さなリラの後ろ姿を思い出していた。
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