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 梅雨が明けた、と朝のテレビが報道していた通り、三階公舎の窓から見える景色には、絵の具で描いたような真っ青な空が広がっていた。  これから暑くなりそうな気配に蝉達が歓喜の歌声を披露しているのが、木々から遠く離れたこの場所にも聴こえて来ていた。  一学期の期末試験を終えた解放感で満ち足りている教室の喧騒も、今日だけは不快に思えなかった。  「明後日から夏休みかぁ」と呟けば、まだこれからホームルームがあるというのに既に夏休みの気分に浸り始めた心が弾んだ。  「いいよなぁ、優等生様はさ」  皮肉めいた呟きに不快な感情が芽生え、嫌悪を顕しながら振り向けば、隣の席に座る新山猛志が真っ青な顔をしたまま机に突っ伏した状態で見上げていた。  「うぉっ、タケシ、ビビらせんなよ」  まるで生き霊みたいな姿を見せるから、大袈裟に驚いた風に装えば、反対に顔を背けられた。  「あぁぁ、俺はどうせ毎回赤点だらけだよ、マサトとは違ってさ」  「お前な、自分が勉強しないからだろ。その上女の尻ばっかり追いかけてるからこうなるんだよ」  阻害された解放感が一気に萎んでしまった腹いせに嫌味を込めた言葉を吐き出した。  「マサトはいいよな、女が寄ってくるんだから。モテない男の気持ちなんか、お前には一生わかんねーよ」  微動だにもなくなった隣の席が気になって、覗き込むように身体を前に動かせば、小学生が駄々をこねているような表情を浮かべ、完全にふて腐れたタケシの顔が見えた。
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