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 隣でうつ伏せるタケシに近付き、己をの過信を自虐的責める情けない姿に優越感が芽生える。その姿に自己中心的な過虐心が煽られ小さな火を灯し始める。  曖昧な煙を伴って燻っていくソレを押さえきれなくなっていく。  俺はちょっとした悪戯心が芽生える感覚にほくそえむと、口角を上げ、タケシの背後に覆い被さった。  「おいっ、重い、マサトぉ、武石雅人、おい、退けろ」  前方にある、同じ年代にしては幾分か華奢に感じられる背中に、全体重を乗せると、苦渋の悲鳴が、くぐもった呼吸音に混じって聞こえてきた。  見下している優越感が心地いいのに、その心地良さを拒絶するような命令口調が勘に触る。抵抗できないように、拒否権を奪うように、己に屈服させたい欲望が頭をもたげ始める。  「嫌だね」  周囲から軽薄と称される、薄っぺらい笑みを仮面に張り付けながら、拒絶すれば、唸るような叫びが机に反響して聞こえてくる。  「マサト、おも、い」  俺をこの世界で認識する為に強制的に付けられた、タケイシマサトと言う単語を発する声に、俺のひねくれた人格が更なる悦楽を求めて、タケシの脇腹に伸ばされようとした時。  「本当に中がいいよね。マサト君とタケシって」  呆れきった口調で俺を見下すような言い回しに侮蔑めいた笑い声が混じっている。聞き覚えのある高い声に耳を傾け、その方向に下から目線を投げれば、黒っぽいスカートが視界の半分を被い、間から伸びた健康的な肌に釘付けになった。
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