第1章

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 一人暮らしの部屋。 六畳の和室。 隣の水道が壁の中ですごい音で流れる。  僕はパソコンに向かって……、スマホじゃないところが時代を思わせる。 僕はモテなかった! 今で言うなら非リア充だ。 居場所はネットの世界。  素直に言うなら彼女欲しい。 でも、なんだかその日は、そんな書き込みができなかった。 彼女がいないというより、寂しかった。 「誰か、メル友になってくれませんか?  なんだかとても、寂しいんです」  返事なんて来ないよね。  そう思っていた。  翌日、返事が返ってきた。 「ナナエ」  それが送り主の名前だった。 「寂しいの?  大丈夫ですか?」  驚いた。 でもだいたいこの手の掲示板って、サクラが多い。 でもこれ、無料の普通のメル友募集だし、もしかしたら本物かも。  返事してみる。 「少しね、でも、返事がもらえて嬉しいです。  ちょっと前にふられちゃったし」  確か、ふられたんだったと思う。 時期を考えると、ミユキだったかな。 まぁいずれも片思いに過ぎぬ。 ともかく、そんなことを書いた気がする。  翌日、また返事が返ってきた。 「誰かを失うのは、辛いですね。  私も、一年前に失った。  彼が、天国へ行ってしまった」
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