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「ーーーちょっ、翔子さん犯罪ってどういう意味よォッ!?」
「だから言葉のまんまよぉ。あんたを犯罪者になんかにしたら私、可愛い娘を遺して逝ったお義姉さん夫妻に申し訳が立たないわよ。まったく……」
そう言いながらもこっそりと口端を弓形に上げた翔子は、悪ノリしてわざとさめざめ泣くフリをした。
それをキッチンの奥の方から見ていた敬助と平助は大変だと、未だ鳴き真似をする彼女の元へ駆けつける。
そしてあわあわしつつも気遣わしげに翔子を慰めた。
「どちたの祥子しゃん、何か悲ちい事れもあった?」
「あの、私で力になれる事があればどうか遠慮なさらず何でも仰ってくださいっ」
その光景をつぐみは何処か冷めたように眺め、次に深い深い溜め息を吐いて肩を落とす。
いつの世も男は女の嘘の涙に騙され易い……。
「……あ~、平助くんに敬助くん?何でもないから気にしないで、ね?ほら、それよりゴハン冷めちゃうから早く食べましょ」
こういう時の祥子は虐めモード全開なのを知っているので、つぐみは慌てず騒がず流す事にして二人の背中を軽く押して席に着かせた。
それから皆にさっさと“いただきます”を唱和させ、食事を強制的に始めさせる。
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