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「あ、そういえば、この猫って名前なんていうんですか？」
「無いけど」
「え、そうなんですか？」
「10日位前に玄関に捨てられてて、今、飼い主募集中」
そう言って、
待合室の張り紙を指で差している彼の表情が、とても悲しそうに見えてしまい、
聞いたことを少し悔やんだ。
だからって訳じゃないけど、
仕事から帰って、この子が居てくれたら癒されるだろうなって思ったから出た言葉だった。
「あ、じゃぁ、私が飼ってもいいですか？なついてくれてるようだし」
「は？うちのアパート、ペット飼うの禁止なんだけど」
結果、凄く呆れられてしまったけど…。
「え、あぁ、そうだった。
あの、覚えてたんですか？私のこと」
「あんなにガン見するヤツ、滅多にいないし」
「う、ごめんなさい。
朝、人に逢うこと滅多にないから、つい…」
それに、自分から墓穴掘っちゃうし。
この人に、朝から失態ばかり晒してる気がするんだけど…。
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