第3章

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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「まいった」 銀月大牙という男は道に迷っていた。 部下に教えられた道を教えられた通りに進んできたはずだった。 黒い短髪をツンツンに尖らせ、革ジャンとジーンズに包まれても尚、はっきりと分かるほどの筋肉質な身体。 路地裏の喧嘩が趣味のそこらの不良程度なら目を合わせることさえ躊躇いそうなギラついた眼光は肉食獣を連想させる。 そんな男が眉をへの字に曲げて、顎をかき、人通りが少なく薄暗い道の真ん中で立ち往生していた。 (どこだここ? 方角はあってるはずなんだが……、しょうがねェ次通りがかった奴に聞いてみるか) 彼にしては珍しく、自分一人での解決を諦め他人に助けを求めようと決心したのだが、如何せん誰もいないし誰も通らない。 当面の目標が目的地への到着から、通行人との接触に変化していることに若干の苛立ちを覚えながら適当に歩を進める。
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