第3章

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何度か角を曲がった所で、彼の鼻がひくりと動き、顔をしかめる。 (こりゃァ、柑橘類の……いや、柑橘系の匂いか……?) 彼の鼻は普通の人間に比べ何百倍というレベルで優れている。 柑橘類ではなく柑橘系と訂正したのは、柑橘類の果実そのものの匂いではなく、香水や整髪料、または飲料として加工されたものの匂いだと判断したためである。 つまり、柑橘系の香水か整髪料を使用している人間が近くにいるということになる。 「こっちか!」 折角見つけた案内人(予定)を逃すわけには行かないと、自慢の嗅覚を頼りに狭く薄暗い道を駆け抜ける。常人なら気づかないような微かな匂いを正確に辿り、見事匂いの元に辿り着いた銀月大牙が見たものは。
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