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夕暮れに染まる。二人の影はだんだんと同じ方向へ伸びていく。長い沈黙が流れ、二人の影が重なったとき、メリッサは顔を上げて大口を上げた。
「あなたがここにいなかったからよ!!」
目には涙が浮かんでいた。
この少年のような男は何者なのか。彼女はなぜ魔法陣を涙ながらに書いているのか。その理由は、古城の窓辺から二人を見下ろす影だけが知っていた。
◆◆◆
あの日から10年が経過した。
遠い昔話であることに違いはないが、メリッサにとって、昨日の出来事であるかのように鮮明であり、募る思いは日々の支えと昇華させていた。
--また、この場所で。
幼き日に憧れを抱いたあの顔立ちと栗色のショートマッシュヘアー。形も色も変わってはいない。彼は、ここに居続ける。ここに居続けたのだ。
時刻は昼。メリッサは魔法学校を首席で卒業した証明書を持ち、入学時に体の成長を見越して大き目のサイズを買ったが、結局は発育が追いつかなかった学校指定のローブを着て門前に立っていた。
熟成した思い出で味付けした、今日というこの時間。
--じゃあ、10年後の今日、また、この場所で
昔、メリッサが聞いたセリフは今ここに立つ彼女の場所を意味していた。
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