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彼は、あの時私を守ってくれた少年は、今どんな姿に成長しているのだろうか。10年経った私を見てどう思うのだろうか。
わくわくしているような、不安感が渦巻くような、おぼつかないような、ハッキリしないような心情だった。
蝶々が心の中で漂っている気分である。どの気持ちに止まろうか手持ち部沙汰になっているような。
この建物も昔のままだった。少し色が褪せただろうか。決して大きい城ではないけれど、小さかったメリッサ自身にとっては雲の上の宮殿のような壮大さを併せ持っていたし、近づきたいけど触れたくはないような異質な威圧感も不変だった。
少し肌寒い中立っていると、メリッサは、古城の2階の窓に人影が覗いていることに気が付いた。
カーテン越しだったので誰であるのかは判別できなかったが、本能や直感やシチュエーションや思い出をきれいなままで残したい欲望が、咄嗟に決めつけた。
「おーい!!」
ほぼ無意識のままに手を振っていた。間違いない。あの時の少年だ。
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