9人が本棚に入れています
本棚に追加
この場所に来てしばらく経つが、一向に動かない状況に、メリッサの気づいてほしいという感情がいつの間にかストレスに変わっていた。
こんなことするの、初めてだけど。
とつぶやきながらメリッサは、足元に落ちていた小石を拾う。指でつまめる小ぶりなサイズだ。
大丈夫。まだ彼は気づいていないだけ。
イライラを押しつぶすように、焦燥感を圧縮するように。
投げるような、飛ばすような、届けるような。
小石を窓へ向けて放つ。
気空域で速度を保ちながら、放物線を描いてガラスへ飛んでいく。
まかり間違えても、窓ガラスが割れてしまうような重量も速度も持ち合わせてはいないが、内包している感情は城ごと吹き飛ばしてしまいそうな破壊力を抱えていた。
そんな彼女の投石は--。
窓へは届かなかった。
厳密には、遮られたのだった。
一瞬だけ円形の光が見えたと思うと、見えない壁が現れたかのように弾き返される小石。
魔法だった。学校で習得するものだ。壁を一時的に作り出し、外部からの攻撃を防ぐ際に用いるよう教わったはずだ。
どうやら、私は、外敵とみなされているようだ。
投石した際と同じ軌道を描いて彼女の元へ帰ってくる。
頭に跳ねた。
爆発した。
「無視しないでよ!!」
メリッサが叫ぶ。
もはや、正常な判断力も理性も持ち合わせていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!