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メリッサを囲うように赤白い光が円柱状に瞬き、着ていたローブも髪の毛も逆立たせながら同じく学校で習得した魔法を放つ。
「もう知らないからね」
炎をまとった球体は加速と引火を繰り返しながら窓へ再び直進する。
これは、存在を気づいてほしいというつもりではなかった。ただ、怒りを飛ばしているだけだ。どうなっても知らないのは言っての通りで、彼女自身もどうなるのか皆目見当がつかない。
「あなたに!! 会いたくて!! 来てるの!!」
2発、3発と続けざまに同じ球体を飛ばすが、城の窓からも他愛もないように同じ魔法を打ち返し、相殺した小爆発が空中でさく裂した。
「どうして!? 私は、あなたが………」
魔法の応酬は続く、途中で不意打ちで石を投げるが、先ほどと同じ壁を作る魔法で冷静に対処された。
--あなたを、愛しているのに!!
誘爆。
強烈な閃光が視界を奪った後、数コンマ遅れで身の毛が逆立つような強風が地を這った。巻き上がった砂煙が収まり、再び沈黙が戻る。
「そう。そういうことなの」
呆然とそこに立つメリッサの視線は虚ろで、目に灯っていた光は完全に消灯していた。
メリッサを見下ろすように直立する古城はただただ呻きを増していくばかり。
ローブのポケットから取り出したのは、手製のチョークだった。
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