第1章

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 昔のナショナル(松下電器)は今、パナソニックというのだろうか。 かの松下幸之助氏が築いた松下電器は、私が子供の頃ー昭和30から40年代ー、カリスマ的かつ庶民的な家電メーカーだった。というか、親戚がナショナルの店をやっていたので、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などはみな、そこで買っていたわけである。テレビで「♪明るいナショナル明るいナショナル みんなうちじゅう なんでもナショナルぅ~♪」という歌が流れていたが、まさにその通りだった。  当時、家にはトレードマークだったナショナル坊やのイラストが入ったナプキンなどのパーティセットや、それこそ金太郎飴のごとく、どこでもナショナル坊やのセロテープなどがたくさんあったが、あれは販促の品だったのだろう。面白い。また、テレビを買った時には(親戚だからおまけに持ってきたのか覚えていないが)小さなタイムカプセルをもらったが、中にはきちんと文章が書いてある豆本が入っている優れものであった。今でも家に残っていると思う。  昔のいい時代を思い出すと、将来になんの不安も憂いもない幼い自分と、若くて元気だった父と母、そしてなぜかのほほんとしたナショナル坊やが浮かび上がる。今はもう「明るいナショナル♪」ではなくなったし、社名も変わった。自分も年をとった。信じられないほどに時代は駆け抜けてゆくものだ。  「明るいナショナル♪」もう一度。
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