30人が本棚に入れています
本棚に追加
目を開ければ、薄闇。
もう一度目を閉じて寝返りを打ったものの、眠気は戻って来ない。
カーテンの隙間からしらじらと、私の夜が明けていく。
一日の始まりはどこか厳粛で、夜と朝の繋ぎ目に立ち合うといつも心が凪ぐ。
もう眠れそうもない。
起きて深呼吸でもしようか。
そう半身を起こそうとする。
『けほ』
やだ、乾燥してたのかな。
喉が調子悪い。
『けほけほ、』
ひゅっ、と短い息を吸って、またむせた。
風邪の引き始めかもしれない。体も重いし関節も軋む。
今夜は出かけるのに。
有名大学の学祭に行った友達が知り合った医学部の男の子との飲み会だそうで。
その子達ほど浮かれてはいなかったけど。
だって人数合わせには違いないし。けど良い出会いを……
夢見てたのよ、あたしだって。悪い?
華やかにしたところで、どうせ地味な顔だから、なるべく手持ちの中で清楚に見える服を選んだ。目立ったら誘ってくれた女の子に嫌われる。
でもこの喉じゃ、話すのも辛いかも。
どうしても、今日は行かないといけない。
特別な夜だから。
喉に手をやって、違和感を覚えた。
これは何度目の
ううん。
考えるのはやめよう。
あの人に、今日会う。
カメオのイヤリングを手のひらに乗せる。
『それ、無くしたくないなら着けるの止めたら』
いいの。
無くしたことで、別の物が手に入る事もあるんだから。
『それは君にとって大事なもの?』
ええ。とっても。
『馬鹿だね、君は。そんなふうに健気だと、ロクでもない男に捕まるよ。愛想もない、きちんとプロポーズもしないような奴に』
なあに?
先生、また……貧血が……
よく聞こえない
『大丈夫、検査をしよう。時間はたっぷりあるし、僕の患者は君だけだから』
ありがとう。
私は、ちょっと先生の事も、
好き
かも
最初のコメントを投稿しよう!