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「ねえ、夏休みなんだから付き合ってくれてもいいじゃない」
誠二は手を止めたまま、うーんと唸って黙り込む。
「一日だけでもいいよ。どうせそのつもりできたんでしょう?
私のパパになるかもしれないなんて考えてたんでしょう?」
「そりゃあ、まあね」
誠二は海帆の方に向き直ると、じっと上から下まで見た。
今日はヒップハングのジーパンに身体にフィットするピンクのTシャツ。
「なによ」
「いや、親子に見えるのかな、なんてね」
「見えるわよ。少し若作りのパパに」
「そうかな?」
海帆が思い切りよく頷くと、
誠二は荷造りしていた鞄からサングラスを取り出して、Tシャツの首元に引っかけた。
「それで、今日はどうする?
海帆さんのパパとして、何をすればいいの?」
海帆はうーんと考えて、テーブルの上に置かれたパンフレットに目を留めた。
「水族館へ連れて行って」
取り上げてみせたパンフレットを受け取って、誠二は言った。
「僕も、久しぶりに行ってみたいと思ってた」
柔らかい笑顔の人だな、と海帆は思った。
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