第1章

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「ねえ、夏休みなんだから付き合ってくれてもいいじゃない」  誠二は手を止めたまま、うーんと唸って黙り込む。 「一日だけでもいいよ。どうせそのつもりできたんでしょう?  私のパパになるかもしれないなんて考えてたんでしょう?」 「そりゃあ、まあね」  誠二は海帆の方に向き直ると、じっと上から下まで見た。  今日はヒップハングのジーパンに身体にフィットするピンクのTシャツ。 「なによ」 「いや、親子に見えるのかな、なんてね」 「見えるわよ。少し若作りのパパに」 「そうかな?」  海帆が思い切りよく頷くと、  誠二は荷造りしていた鞄からサングラスを取り出して、Tシャツの首元に引っかけた。 「それで、今日はどうする?  海帆さんのパパとして、何をすればいいの?」  海帆はうーんと考えて、テーブルの上に置かれたパンフレットに目を留めた。 「水族館へ連れて行って」  取り上げてみせたパンフレットを受け取って、誠二は言った。 「僕も、久しぶりに行ってみたいと思ってた」  柔らかい笑顔の人だな、と海帆は思った。
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