第1章

2/11
前へ
/11ページ
次へ
 ーー人々は様々な衣装を着て祭りを楽しんでいる。そこには自由と協調が勝手に生まれていた。知らない人たち同士が隣で酒を酌み交わし、子どもたちもお菓子を色んな大人たちから貰っている。 「仮装祭か……。ハロウィン的なお祭りはこっちの世界にもあるんだ」  部屋の窓から人々の楽しげな祭りの様子を見ている白衣を着た女性が呟いた。 「レイナさんの言う【はろうぃん】ってどんなものなんですか??」  白衣を着た女性の名はレイナ。長い髪を後ろで団子に纏めており、キリッとした整った顔は見るものを魅了し、時には威圧感を与える二面性を持っている。  そんなレイナの近くで書類に埋もれながらも、仕分けをするために必死に働いている部下の女性の名はミル。顔のサイズと合わなそうな眼鏡をしており、栗色の癖っ毛を肩まで伸ばして小動物のようにせっせと働くのが得意である。 「ミルには何度か話したけど、私のいた世界では季節に1つや2つお祭りみたいなことがあるんだよ。ハロウィンはその1つさ。人々はモンスターや魔女みたいな姿をして皆で同じ時間を共有するんだ」 「へぇ、モンスターや魔女ですか!? 他のものになりきるって仮装祭に似てますね」 「あぁ、まさかこんなことで自分のいた世界のことを思い出すとは思ってなかったけどな」  窓の外で行われている仮装祭ではなく、どこか遠くを見つめるレイナ。  ーー今から数年前にレイナは今いる世界とは別の世界から来たのであった。本名は工藤玲奈(くどうれいな)であり、初めて出会った人からレイナと呼ばれて以来、自分でもレイナと名乗るようにしていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加