第1章

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 レイナは研究所を出ると爆発の起きた方向へ走っていく。彼女自身、こちらの世界に来て身体能力が上がったということはなかった。 「そろそろいいかな」  レイナは人目のつかない所で手に持っている古い書物を開く。分厚く謎の文字で書かれた書物は彼女が声を出して読んだ場所の文字の色が光出していく。  やがて1ページ全ての色が変わると本が光に包まれていき、その光は球体の形をして本から飛び出すと光が消えて一人の男性が出てきた。 「……久しいなレイナよ。たまには呼んでくれないと我輩も寂しいと感じることだってあるぞ」  その男は中年の風貌ながら若々しい燃えるような赤色の髪に透き通る蒼い瞳を持っている。背丈はレイナよりも大きく、紳士服のような黒い服を見に纏っていた。 「ごめんごめん、ここしばらく戦いなんてなかったからね。ギルバートだって偉い身分なんだから忙しいでしょ??」 「そんなことないぞ。我輩は偉いから他のものにすべて仕事は任せておる。部下が優秀であるからな。だから暇なのだ」 「分かったわ。この騒動が収まったら、他の皆も呼んで久しぶりに集まりましょうか」  ギルバートはその言葉で喜んでいたが、一瞬どこか寂しそうな顔をしていたような気がした。
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