脱却③

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「そっか。……良かったね」  声音は変わっていないから至って平気そうに思えるが、 顔が見えないから不安が募る。 (お前は今、どんな顔をしてるんだ?本当はどう思ってるんだ……?)  もう友人としてはいられないのか、 それともそれすらも超えて嫌いな人間の部類に入ったのか…。 「唐木――」 「それって、お兄さんでしょ?」 (……えっ――)  聞き間違いだろうか…。 「一番上のお兄さん、李煌さんだよね」  名前が出たことで聞き間違いでないことを確信した。 「……知ってたのか」 「僕を誰だと思ってるの?」  振り向いた唐木の顔は、 僅かに口角を上げてはいるが、 少し無理をしているように見えた。  そうさせているのが俺だろうから、何も言えないが…。
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