脱却③

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「ううん、見かけたって子に聞いたけど袴じゃなかったよ。――ね?相見くん」 (俺に話を振るな)  とはいえ、 俺の話をしているならそうもいかないんだろう。 「……ああ」  俺の返答に周りの女子があからさまに肩を落とした。 「そっかー、残念。袴だったら絶対写メ撮ってたよね」 「うんうん!転送希望する!」 (それは盗撮だろ。新年早々犯罪に手を染める気か。女って怖いな)  素っ気ない突っ込みもそこそこに、 俺は席を立った。  女子の視線に背中を刺されながらも、 教室を出て廊下の窓際に凭れる。  寒いけど、無性に泳ぎたい気分だ。  一人でのんびりと、 静かに…――
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