脱却③

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 …――  カチャっ……。 「お、相見」 「……?」 「唐木が昇降口で待ってるってさ」 「…分かった。ありがとう」  更衣室に入ると、 丁度出て行く部員に伝言を受け取った。  唐木と一緒に部活を終えるのが気まずくて、 一番最後まで残って泳いでいたのだが、 そんな俺の気持ちを汲み取って アイツは更衣室から出て待ってくれているのだろう。 (色々、気ぃ回し過ぎだよな……アイツも…)  ポタポタと、髪から滴り落ちる水滴をタオルで拭きながら、 誰もいない更衣室で小さく息を吐いた…。  着替えて昇降口へと向かうと、 下駄箱の端で背中を預けてケータイを弄っている唐木の姿が見えた。  一度小さく深呼吸をしてから近付く…。 「あの、相見クン…!」 「!……、?」  突然背後から名前を呼ばれて振り向くと、 知らない女子が俺を見上げていた。  まったく知らない顔だ。
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