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そんな感じに、二人で五円玉を探し始めた私たちだったのだが、日が暮れる頃にはなぜか百匹あまりのおばけ達が私の五円玉探しに付き合ってくれていた。
けれど、そこまでしても五円玉は一枚たりとも見つからなかったのだ。
結局、私は一人一人に感謝を述べて、その日の捜索を打ち切ることにした。
そうして複雑な思いを引きずりながら、私はあの少年の家に倒れこむように帰ってきた。
「ただいま」
「うん、おめでとう」
玄関先で私の帰りを待っていた少年は、そう不可解なセリフを口にした。
「え? おめでとう?」
「うん、そうだよ。おめでとうだよ」
「えっと……なんで?」私は思わず首を傾げる。
「なんでって、あなたが百のご縁を自分のものにしたからだよ」
「え? でも私、今、五円玉は二枚しか持ってないけど……」
言葉を返した私は、ポケットから二枚の五円玉を取り出し彼に見せてやる。
でも、彼はそれに一切目をくれることなく、私の目を見つめたまま微かに笑って言った。
「誰がいつ五円玉って言ったかな? 僕は最初から『ごえんをひゃくあつめる』としか言ってないよ。勘違いしたのはあなたの方さ」
呆れたように少年は息を吐いた。
「それじゃあ、もう一度だけ訊くよ。これが最後だ。あなたは元いた世界に帰りたい?」
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