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◆ ◇ ◆ ◇ ◆
目が覚めると、すでに夜は明けていて、私は病院のベットに寝かされていた。
後に看護師から聞いた話によると、私は自宅のすぐそばにある古びた稲荷の祠の前で倒れていたらしい。
そこを深夜頃にテーマパークから帰ってきたカップルが見つけて通報してくれたとのことだ。
ハロウィンが終わり、十一月の初日。
私はおばけ達の世界で一週間近い時間を過ごしたはずなのだが、こちらの世界ではほんの数時間しか経っていなかったみたいなのだ。
或いは、あの出来事は全て夢の中での出来事だったのだろうか。
何にせよ、会社に臨時の休暇を申し出た私は、病院で一通り検査を受け、身体に何も異常がないことを確認した後、その足で真っ先に例の店が構えていた場所まで足を運ぶことにした。
でも、奇妙なことに、そこにあったのは二メートル程度の小さな赤い鳥居と、雨風にさらされ極限にまで古びた稲荷の祠だけだったのだ。
辺りを見回して見ても、以前見たうどん屋の姿などどこにも見当たらなかった。
やはり悪い夢か何かだったのだろうと、その日の私は特に深く考えることもなく自宅に帰ってきた。
一日ほど留守にしていただけなのに、自宅がひどく懐かしく感じられたのはやはりあの夢のせいなのだろう。
しかし、それから数日経ったある日、興味本位で自宅近くの稲荷の祠について調べていたら、その祠のある場所には曰く付きの歴史があることが分かった。
それを目の当たりにした途端、私はゾワリと鳥肌が立ってしまった。
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