化けうどん終了につき、500円

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 今から遡ることおよそ五百年、戦国時代。かつてこの場所は、口減らしの為にと、家族を捨てる場所として周辺の地域から隔離された小さな村があったらしい。  しかし、そうした人捨ての習慣は次第に薄れていき、戦国の世が終わる頃には、ここは単なるゴミ捨て場として機能していた。  割れて使えなくなった鏡や、穴の空いた手袋、食べ残され腐敗した食物、果ては町中で撲殺された動物の死骸など、様々なものが捨てられていたのだ。  だが、もちろん人捨ての習慣も完全になくなったわけではない。  いわゆる奇形児や不治の病に侵された伝染病患者なども、江戸時代初期の頃まで捨てられていたとのことだ。  そうした人々の供養も兼ねて、江戸の中期頃に建てられたのがあの稲荷の祠らしい。  その頃から、この地では度々神隠しが起きていると、私が地元の図書館で読んだ書籍には書かれていた。  そう言えば、ハロウィンというのはこの世と霊界とを繋ぐ目に見えない『門』が開かれる日だという話を以前何処かで聞いたことがある。  でも、どうして私があの世界に呼ばれたのか、そこだけはいくら考えてみてもやっぱり検討もつかなかった。  ただ、そういったこの地の曰くを調べているうちに、ある一人の少年の話に私は辿り着いた。  少年に名前はなく、生まれて間も無くこの地に捨てられた彼は、生まれた村では『鬼の子』と呼ばれ忌み嫌われていたらしい。  それはもっともな話で、彼は生まれた時から死人のような肌をしていて、その瞳と髪は赤胃色をしていたからだそうだ。  食べるものもろくに与えられず、飢えと喉の渇きから、彼は時折自らの身体を傷付け血をすする事さえあったという。  また彼を産んだ母親は、我が子をこの地に捨てたはものの、その後悔から自害したと語られている。  それを見て、私はすぐにその少年がおばけ達の世界で出会った少年だと言うことに気付いた。  そのことが意味するのは、私が夢だと思っていたあの世界は、この世界の何処かに実在するということだ。
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