工房では静かに、ハロウィンは騒がしく

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Ⅱ  ウィル・アルフォードはジャック・オー・ランタンだ。こう言うと、馬鹿にされてしまいそうだが、という以前に、ジャック・オー・ランタンが、なんなのか分からないという人もいるかもしれない。  ハロウィンの日に作られるカボチャのロウソク。それが、ジャック・オー・ランタン。アイルランドやスコットランドの伝承には、天国にも地獄にもいけなかった亡霊なんだとか言われてるが、ハロウィンに作られるジャック・オー・ランタンは悪霊を追い払ってくれる灯りだとも言われる。  そんな悪い奴なんだかいい奴なんだかわからないジャック・オー・ランタンの一人であるウィルは、今猛烈に悩まされていた。  彼はカボチャの頭をうんうん、いやいや、ちがうちがうと、もぎ取れそうな程に何度も何度も上下させ、落ち着きなく、マントと紳士服の姿で、部屋のあっちこっちを動き回っていた。  ハロウィンである。  ハロウィンとは、収穫祭の時の行事である。それにどんな意味があるのかとかは、たぶんそれを楽しんでいる人達のほとんどが知らないし、意識していない。  ジャック・オー・ランタンですら、最近はなんで自分たちがハロウィンを盛り上げる役になっているのか、意識出来てないやつらが殆どである。
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