正義のヒーロー

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ダイチは猛神の気持ちもわからなくはなかった。 世間が正義のヒーローを否定する中、それでも自分は正義のヒーローを目指した。 勿論それは復讐の為… でも今は? 兄は生きていた。 仇だと思っていた黒武者は兄の命の恩人だった。 そして兄を本当の意味で殺そうとしたのは… 「俺はお前を…ヒーロー協会を許せない!兄のこともだけど、裏組織ハルノートとしてやったことも!」 「…ハルノート?なんだそれは?」 「しらばっくれるな!お前らヒーロー協会の裏組織だろう!犯罪の斡旋…そしてその被害者壊れた心まで利用して怪人にしてたんだろうが!全部兄貴と黒武者から聞いてるんだよ!」 ダイチは再び激昂していた。 思い出す度にムカついてムカついて仕方がなかった。 「…すまんが本当に知らない。兄…ジャスティスレッドのことか…いや、そんな訳はない。ジャスティスレッドは2年前に亡くなっている。君も知っているだろう。」 ダイチは更に声を荒げる。 「だから!兄貴はお前らの思い通りには死なずに生きてたんだよ!黒武者の鎧を着た十文字ハヤトに助けられてな!」 猛神はそれを聞き驚いた表情を見せる。 鳩が豆鉄砲を食らった顔とはこのことだ。 「待て。十文字ハヤトはもういない。彼は…何年か前に殉職している…君のお兄さんも…遺体はDNA鑑定で確認している。嘘ではない。」 ダイチは頭が沸騰しそうだった。 この期に及んでまだ嘘を並べるのかと。 「いい加減にしろ!」 ダイチは再び変身しようとした。 こいつはもうダメだ。 殺すしかない。 今こそ正義を執行する時だ、と。 「…二人の死は本当だ。間違いない。私も今更命乞いはしない。だが…私の知らないところで、何かが起きているようだ。とりあえず話をさせてくれ。話さえ聞いてくれればその後に私を殺してくれて構わない。」 訴える猛神。 命乞いなら聞く気はなかったが、話さえ聞けば命も差し出すとは…まぁいい。 殺すのは何時でも出来る。 話だけでも聞いてやることにした。
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