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ヒーロー協会本部中枢。
真っ暗なままの研究室…
ダイチは首を吊ったマスターを見つけた。
足元には遺書が残されており、中身は「騙していてすまなかった。」から始まる懺悔の言葉と、ヒーロー協会の闇の部分、そしてヒーロー協会にも内緒でエンターテイメントとしてヤラセを企て、その結果ジャスティスレッドの死を招いた事を後悔していると言った内容だった。
騙していてすまなかった。
我々ヒーロー協会は正義のヒーローを演じる為に自ら悪の秘密結社を作り出した。
そうでもしなければ『ヒーロー』の存在意義がなくなってしまうと思ったからだ。
猛神会長に自演の話を貰った時に、私は自らの研究が打ち切られるのを恐れるが為にその提案に乗った。
国直属の組織ならば、国からの支援も受けれる。
一方では未知の素材を研究も出来る。
研究が私のすべてだった。
そして思い上がった感情から私は研究以外にも手を出した。
2年前の事故も私の責任だ。
自ら作り上げた悪の秘密結社にジャスティスレッドの戦線離脱を依頼したのだ。
他のヒーローや、これからの人気の為にと相談され、それを断ることが出来なかった。
それどころか、それは面白いとプロデューサー気取りだった。
それがまさか死亡事故どころかヒーロー時代すら終らせる結果になろうとは思いもしなかった。
本当に申し訳ない。
謝ったところで罪は消えない。
死に逃げる私をどうか許さないで欲しい。
私はそれだけのことをした。
本当に申し訳なかった。
二階堂ダイチはマスターの遺書をグシャっと握りしめ、泣きながら呟いた。
「なんだよ…ここではにいちゃん本当に死んだことになってんじゃん…じゃあアレは誰なんだよ…なんで話が食い違ってんだよ…なんでここに一緒にいないんだよ!」
二階堂ダイチは暗闇で立ち尽くしていた。
自殺する人が嘘を書くとは思えなかった。
ならこの遺書に書いてあることはヒーロー協会では事実なんだと。
マスターは兄の失脚を依頼して、その結果兄は死んだんだと。
二階堂ダイチは疑心暗鬼になっていた。
生きていたことに安堵し、信頼していた兄のことも今では信じていいのかわからない。
アバドンのことも言われていない。
ハルノートの話も嘘だった。
ヒーロー協会に追われて元国防隊が消された話も…
自分は利用されているのか?
そんな思いが強くなる。
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