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真っ暗な研究室に立ち尽くす二階堂ダイチ。
そこに入り口から近付く足音があった。
「…ダイチか?」
恐る恐る話し掛けてきたのは二階堂ソラだった。
後ろから黒武者も表れた。
「…これ小笠原か?チッ…首吊ったのかよ。」
「自らの業から逃れる為に自害したか。哀れな男だ。」
ダイチは涙を拭い、ゆっくり口を開く。
「…あのさ、にいちゃんって…本当ににいちゃん?」
「ん?何言ってんだ?にいちゃんはにいちゃんに決まってるだろ。」
「俺さ、猛神と戦って…勝ったんだ。」
「マジか!スゲーなダイチ!アバドンブラックだろ?俺じゃアイツは倒せなかったぜ!マジでスゲーよお前!」
「…したら猛神がさ、ジャスティスレッドは死んでるし、十文字ハヤトも死んでるって言うんだよ…さっきもマスターの遺書に…二階堂ソラは私のせいで死んだって…」
黒武者が割って入る。
「そんなことよりアバドンレッドは覚醒させたのか?」
ダイチは一瞬驚いた。
そんなことってなんだよ、と。
でもすぐに素直に応えた。
「あ…ソフトウェアインストールってやつはやった。それも猛神に聞いたんだけどさ、アレって…」
ダイチの言葉を遮り黒武者が話す。
「猛神の言葉を信じているのか?命乞いの為に口から出任せなんぞいくらでも出るぞ。」
そのまま黒武者は続けた。
「猛神は殺したのか?」
「いや、猛神は…殺してはいない…」
「…シロ、行って始末してこい。それと…わかってるな。」
「勿論です。」
兄貴が下層へと降りていく。
黒武者がゆっくりと近づく。
「…流石に人殺しは気が引けたか?」
「…いや…なんか…頭が混乱して…」
「そうか。しかしアバドンブラックを倒したのは素晴らしい功績だ。良くやった。」
ダイチは質問を遮られたことで萎縮していた。
そして…もし、万が一自分が利用されているだけだとしたら…その事を考えるとこれ以上は訊くことが出来なかった。
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