第1章

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 本の中に住んでいるのに、1巻と2巻はあるけれど8巻までの、 3、4、5、6、7巻と5冊も無くなっていて、困ってます。 私は、ほぼ全巻を通して登場するキャラクターなのですが。 この扱いは不当だと思うのです。  そうでしょう?  本の住人として、外界から観測されるターゲットとしては、 その主要な部分を担っている私が、不足しているという事。 貴方なら許す事ができますでしょうか?  他のキャラクターだとか筋書き等は二の次です。  まず大事にあって私のような語り手、狂言廻し、或いは、 主人公のフィルターを通した読者想像の視覚的潜入。 なんでもよいのですが、インターフェイスが欠落する。 それはとても不便ではありませんか?  興味がありませんですって?  私はキャラクター性を保持しようと必死なのですよ。 全8巻の作品を、貴方はまだ読んでいません。当然です。 紛失したのですから、当たり前なのです。  貴女の化粧は紙とインクがあるから出来るの。  それでも私が私を演じているから、貴方には私が イメージできるのです。吾輩はそういう努力を惜しまない。 畢竟、誰であれど似たようで、似つかわしくもない苦笑の 努力にエネルギーを注いでおられるではないのか?  貴殿が拙者の立場にあればどうされるのかな。  おめえなんかが自由気儘、悠々自適に生きていけるほど 世界は自在ではないじゃろうが。ワシなんぞ、本が数冊程 見当たらないというだけで、このザマでありますのよ。  自らを振り向いてごらん遊ばせ。  貴方様はどんな軽々しいお立場で、その足元を確かめて わたくしの前に、何を示されるのですか。 貴殿の本が大切なら、本の整理は大切に。でもまぁ。 獣として生きる道もないではないが。 ああ、なんじゃ。お主は一人ではないのか。  諸君が物語りでは無いように。だが。  アンタの履歴書が、その人なのかい?  これは物語では無いのです。よっと。 本を開けば、すぐに始まりますけれど。 こういう謎賭けが、好まれないのは不自由で同情致します。 俺の一人称を返してくださいましな。  本を集めて下さいませ。消えないうちに。 誰もいなくならない、その間に整理整頓するのが仕事。  かしこ
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