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『……』
『…………』
結局、あの性悪業者のやる気の無い応対と犯罪者扱いされるかもしれないという恐れから強く出れず、うまく丸め込まれてしまい、今、男はベッドに腰かけて足をぷらぷらさせている少女と見つめあっている。
見つめあっているといっても、ロマンティックなそれでは決してない。
このガキをこれからどうしようか。
それに尽きる。
『えーと、とりあえず脱ぐ?』
『やめてください捕まってしまいます』
健全な育ち方をした小学生が着ていてはいけない露出の多すぎる服に躊躇いもなく手をかけた少女を制して、男は椅子にへたりこんだ。
こんなはずじゃなかった。
芸術家としての成功の第一歩になるはずだった。
美大では常に一等だった。
ボサボサの頭をバリバリ掻く。
昔からこうだった。
肝心のところで失敗する。
些細な失敗から海外留学の夢を絶たれたばかりのはずなのに、何一つ成長していない。
はぁ、と大きな溜め息をつく。
せっかく貯金をつぎ込んで買った一眼レフもまるで役に立ちそうになかった。
『ねぇ、お兄さん』
落ち込みぶりを見かねたのか、再び少女が口を開く。
スマホの画面を見ながら、本当に何かのついでのように、彼女は言った。
『写真、撮ってよ』
テーブルの上で所在無さげにしている一眼レフ。
無用の長物となってしまったそれを見やり、手に取ってみる。
さすがにウン万円もした代物は、この安っぽい部屋に置いてあるだけで場違い的な存在感を放っていた。
『…………そう言えば、試し撮りもまだやってなかったか』
『じゃあ、なおさら練習しないと、ね?』
そうと決まれば、とスマホを放り出し、少女はトトト、と窓際に小走りで駆けていく。
窓に寄りかかりポーズを取る。
早く早く、と急かす少女に向けてカメラを向ける。
イタズラっぽく小首を傾げた彼女にピンとを合わせて、シャッターを押す指が固まった。
『…………!』
可愛い……!
何の抵抗もなく、そう心に叫んでしまっていた。
自分にそんな趣味があるとは信じたくないが、カメラ越しの彼女は異様な魅力を放っていた。
ホットパンツからすらりと伸びた脚は、膝より上までの黒いソックスに隠れていたが、大腿からちらりと覗く白い肌はその素足の美しさを十分に物語っている。
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