12人が本棚に入れています
本棚に追加
夕方5時
美桜は、重い足取りで会社を出る。
携帯を開くと、母からメールが入っていた。
= 菜津と葉瑠に会いたくなっちゃったから、拉致させてもらったわ~!
日曜日に、迎えに来てね! =
自分の母親ながら、思い立ったら、すぐ動く行動力に、尊敬すら感じる…
美桜「まったく、勝手なんだから…」
そうだ。勝手なんだ、みんな。
プロジェクトチームに入る話だって、勝手に突然…
美桜「はぁ~」
美桜は溜め息をつきながら、バスに乗った。
バスの中では、電工掲示板がニュースの文字を流している。
明日から明後日にかけて、今年最大の大型台風…
バスからの風景を見ていると、そんな感じはどこにも感じられない。
そして、どこかほっとしている自分に気付く。
そっか、今日は急いでお迎えに行かなくていいんだ。
部長の話も考えたいし、菜津と葉瑠もいないし、明日休みだし、久々に一人で呑みに行っちゃおうっかな。
そう思うと、急にワクワクしてきて、顔がほころぶ。
バス停に着くと、美桜はガッツポーズをしたくなった。
よしっ!
今日は、大輝もいない!
邪魔者なしで、一人で悠々自適よ~!
美桜は、そのまま、近くのバーに入った。
洒落てはないけど、カウンターがあり、足の長いテーブルに椅子がいくつか置いてある。
奥の方では、ダーツを楽しむ若者たちの笑い声が聞こえいる。
美桜は、カウンター前に腰掛けた。
「いらっしゃいませ♪おねーさん」
美桜「!?」
その声に、美桜は驚き、声の主を見る。
大輝「菜津ちゃんと、葉瑠くんは?」
バーテンダーの格好をして、髪を整えた大輝は、にっこりと微笑んだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!