12人が本棚に入れています
本棚に追加
結局は、男を見る目がなかった。
そう言ってしまえば、それだけのことだ。
けど…
あの男は、確実に私の心に爪痕を残した。
トラウマ…。
親子3人で、必死に逃げた、あの日のことを思い出すと、息が苦しくなる。
美桜は、大きく深呼吸をする。
「ママ~…?苦しいの?」
眠た目を擦りながら、4歳の男の子、葉瑠(はる)が起きて来る。
美桜「ぜ~んぜん。苦しくないよ。
どうしたの?目が覚めちゃった?」
葉瑠「う~ん…」
まだ眠たそうな葉瑠を抱っこして、寝室に入る。
そこには、7歳の菜津(なつ)が静かに寝息をたてている。
美桜「じゃあ、ママと寝よっか?」
葉瑠「うん」
胸をトントンしてあげると、葉瑠は、すぐにまた夢の中に戻っていった。
ふたりの寝顔を見ていると、まだまだ頑張れると思えてくる。
小学校に入ったばかりの菜津は、手が離れてきたけど、葉瑠は、まだまだ手がかかる。
それでも何とか、1年やってこれた。
これは、紛れもない事実なんだから、大丈夫。
そう言い聞かせて来た。
美桜「…さてと」
美桜は、重い腰を上げて、夕食の片付けと、翌日のふたり分の支度をする。
その後は、洗濯機を回して、室内干しする。
朝は忙しくて、洗濯物を干している時間がないためだ。
その他の雑用を済ますと、いつも日付が越えてしまう。
.
最初のコメントを投稿しよう!