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あ~、もう!
美桜は男を無視して、走り出す。
「えぇっ!?おねーさん、足、遅っ!」
「!?」
男は、美桜の手を掴むと走り出した。
美桜「ちょっ…!」
そのまま、男に引っ張られるように走って、美桜たちが、バス停に着いたのと同時に、バスも到着する。
バス停に並んでいた人達が、バスの中に入って行く。
「間に合って良かったね、おねーさん♪俺のお陰だからね!?」
美桜は、バスに乗りながら、振り返って足を止める。
美桜「感謝はするけど、私は子持ちよ」
そう言ったところで、バスの扉は閉まった。
男は相変わらず、にっこりと微笑んでいた。
美桜「変な子…」
バスが出発する直前、男は大きな声で言った。
「俺、大輝!」
美桜「…だいき?」
聞いたこともなければ、会ったこともない名前だった。
美桜「やっぱり、変な子…」
美桜は、首を傾げながら、つり革に掴まった。
美桜の仕事は、アパレル関係。
広告のデザインなどを手掛ける部門だった。
金銭的に、正社員のまま、使ってもらっている。
ただ、やっぱり、ここでも時間に追われる。
保育園のお迎えまでに、自分の仕事を片付けなければならないからだ。
理解ある部長のお陰で、離婚後は割と軽い仕事を回してもらえるようになった。
でも、他のオジサマ方には、離婚したというだけで「最近の若者は、すぐ離婚する」という目で見られているのも事実。
そして、他のOLと、ご飯を食べに行く時間もなく、ランチはパソコンとパンを片手に机から離れられない。
ランチの時間も仕事をしなければ、保育園のお迎えまでに、間に合わない。
そうなると、自然と他のOLたちとも距離が出来てしまっていた。
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