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「何だ、濡れてないな」
「すみません、青山さん」
「撞(ツ)けばいいのか?」
「あん。そんなに強くしたら、壊れちゃいます」
「毎日よく濡らさないと、駄目なんじゃないか」
まだ陽の高い、午後のオフィスで。
「・・・なあんか、会話だけ聞いてると卑猥っすね」
キャップが乾いてしまって出の悪い水のりに、湖々海と悪戦苦闘。
うろんな目で見る彼を睨む。
「堀田。お前の頭の中が卑猥なんだろう」
「や、青山さんも渡瀬さんも。何か怪しいんすよねえ」
湖々海と付き合い出して、念のため社内では秘密にしているのだが。
「怪しいって、なにが怪しいんですか?」
無邪気に問う湖々海を見て、頭を抱えそうになる。
「ね、ココちゃん。カレシいるの?」
呼び方が馴れ馴れしくなった堀田に、怒りを覚え。
「下らん話をする暇があるなら、さっさと手を動かせ」
彼をひと睨みする。
「ココちゃーん。オレの事、手伝って?」
言われた彼女は、首を傾げた後。
「手伝うのは良いですけど、彼氏はいますよ?」
当然のように言い切った。
全く。天然には敵わない。
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