1 青山課長の夜の研修 

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≪side 湖々海≫ 「夜の研修?」 ランチタイムの、女子の噂話。 「そう、課長が手取り足とり、教えてくれるんですって」 意味深に笑う先輩達に首を傾げながらも考える。 女子限定だというその研修。だれでも受けられるのかな。 タイピングの速さには自信があるけれど、漢字の変換や言い回しのミスがある。 書類をただ写すだけではなくて、誤ったところを訂正しながら入力しないといけないのに。 わたしはそれが苦手だ。 まだ20代後半の若さで、課長職についてる青山さん。 整った顔によく似合う、スクエア型のシルバーの眼鏡。 必要以上に話さない、少し無愛想な感じがクールに見える。 でも。 「青山さん、どうぞ」 いつも飲むブラック珈琲のマグカップを差し出すと、 「ああ。すまないな渡瀬、ありがとう」 ちゃんとわたしの瞳を見てお礼を言ってくれる。 もっと彼の役に立ちたいな。 だからこそ、研修を受けたかった。 少しでも傍にいられるかもしれないから。 そんな下心があったのは、事実だった。
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