1 青山課長の夜の研修 

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≪side 青山≫ ---渡瀬湖々海(ワタセココミ) 今年入社した彼女は。 茶フチの眼鏡が似合う、タイピングの速度と真面目さが好印象の部下だった。 「あー。可愛くて胸デケーのに、ガチ眼鏡とか残念っすね」 「目が悪いなら、掛けて当然だろう」 食堂で離れた場所に座る彼女を話のタネに、部下が残念そうに首を振る。 「イヤ、今はカラコンっす。眼鏡はダテならいーんすけど」 残念なのはお前の思考だ。 軽薄な部下のセリフに呆れながらも、彼女がそういう対象から外れている事に、どこか安堵もしていた。 『青山さん、お疲れ様です』 俺好みの濃さの珈琲を淹れてくれる彼女は。 “課長”ではなく、ちゃんと名前を呼んでくれる。 その真っ直ぐな瞳。 度の強い眼鏡のせいで、小さく映る瞳は。 眼鏡を外したら、黒目がちな大きなものなのだろうと推測できる。 ---彼女の眼鏡を外したい そんな俺の下心なんて、想像もしないのだろうな。
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