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≪side 湖々海≫
入社してから夏も過ぎ。
秋に差し掛かろうかという頃になって、居残りで研修を頼むなんてさすがに恥ずかしく思い。
『青山さん・・・ちょっと良いですか?』
たまたま彼が一人で歩いているところを捕まえて、頼んだのだ。
『時間外の研修』を。
わたしの願いに驚きを見せた後。
彼の表情が見る見る間に冷たくなったのに、気付いた。
さすがに今頃になって研修を頼むだなんて、呆れられたのか。
それとも責任感の強い青山課長は、自分の教育を責めているのかも。
そんな風に反省しながら、提示された時間にオフィスに戻ったわたしに言い放たれたのは、
「下着をおろして、両手をデスクに付けろ」
予想外の冷たい言葉だった。
「聴こえなかったのか?背中を俺に向けて、言われたとおりにやるんだ」
銀のフレームから覗く瞳は、月光に照らされて冷たく光り。
抑揚のない声色が、彼のセリフが決して好意からのものではない事を告げる。
『女子だけの研修』の意味が分かって。
「---っ」
くちびるを強く噛みしめ。
大きく右手を振りかぶった。
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