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≪side 青山≫
茶色い縁の眼鏡の奥の、濡れた瞳が真っ直ぐに俺を見つめる。
「深夜のオフィスで俺に抱かれるって・・・噂だ」
思わず彼女に口付けながら、それでも確かめずにはいられなかった。
誰が流した分からない、その噂。
若くして出世した俺を妬んだ奴か、はたまた俺に振られた女の恨みか。
鵜呑みにした女子社員が、身体を使って俺を籠絡しようとするのも一度や二度ではない。
とっさに口付けたものの。あまりの柔らかさに驚いて。
もう少し味わおうと、首を傾ける---タイミングで。
「何ですか、その噂は?」
彼女が勢いよく顔を上げる。
真っ直ぐなその瞳は、駆け引きも絡み手も何も無い。
眼鏡のその奥に、キョトンとした彼女がいた。
「入力のミスを防ぎたくて、研修受けたかったんですが」
真剣に力説する彼女に今度は何故か、イラッときて。
「あっ。何するんですか」
彼女の眼鏡の真ん中をつまんで、顔から取り上げる。
何するかって?
「だってキスするのに、邪魔だろう?」
「青山さ---」
可愛い口を塞いで、怯えて奥に逃げる舌を追いかける。
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