[第1章]暗黙のルール

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その日の悟は、 さわやかなアイスブルーのVネックニット。 濃い色のデニムも 茶色い革ベルトも 黒のコンバースも 素朴だけど、しゃんとしていて すごくすごく品が良い。 土曜日の夕方だから、 私はスエット素材のグレーのツービースに パステルピンクのバレエシューズ。 すごくカジュアルな装いだけど、 きちんとメイクとアクセサリー、 髪の毛をゆるく巻くことも忘れていないから 今も少し悟のことを意識しているのかなと思う。 ふたりの待ち合わせは、いつも六本木一丁目。 落ち着いた街の雰囲気が好きだし、 お互いの職場からも適度な距離がある。 ビジネス街だから、 週末にピザが半額になる手頃なイタリアンレストランがあって いつもそこでとりあえずのシーザーサラダをつつく。 今はもうお互い働いていてお金を気にすることはないけれど、 学生時代を一緒に過ごしたから 2人でいるときは堅実なお店選びが多いのだ。 1日3回の食事は、セックスよりも頻度が高いから 相性が重要と聞いたことがある。 悟といると気兼ねなくメニューを選べ 苦手なお酒も呑まなくてよくて、最高だ。 やっぱり、悟をパートナーに選ぶことができれば 両親も絶対に気に入るし、 どんなに幸せな人生が過ごせるのだろうと思い ため息が出てしまう。
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