老婆は万聖節の夜に黒猫の夢を見るか

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老婆は万聖節の夜に黒猫の夢を見るか

収穫期が終わり、冬が始まろうとしていた。 今宵、暦が切り替わる。 収穫を祝い労う陽気な祭で踊り疲れた村人たちは、巨大な聖火を残したまま日暮れ前に家路へと急いだ。 この日家に火を灯すことは固く禁じられている。 煌びやかな輝きに魅せられた魔物が寄りつかぬように、である。 これから迎える不穏な時を、真っ暗な家に閉じこもって静かにやり過ごす。 大禍時が来る前に、彼らは家に帰らねばならない。 風習を重んじ変化を忌む小さな集落が頑なに守り続けてきた伝統だった。 ――この夜の逢魔により魔女の烙印を押された女がひとり、集落からは離れた森の奥深くでひっそりと暮らしている。
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