1章 いつもの火曜日(Side光)

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1章 いつもの火曜日(Side光)

「ただいま」 後ろ手でドアを閉め、脱いだ靴の向きを足で器用にかえながら、灯りのついた部屋に向かって声をかける。 4階建てマンションの角部屋。二人で不動産屋めぐりをして3日目で決めた、気に入りの部屋だ。 「……おかえりー」 ワンテンポ遅れて明るい声が返ってくる。 バックに聞こえる笑い声は、毎週楽しみにしているトーク番組のものだろう。 いつもと同じ、火曜日。 俺の『相方』は、いつもと同じスウェットを着込み、麦茶のグラスを片手に迎えてくれた。 色素の薄いサラサラの髪の毛に、陶器のように透き通る肌を持つ彼は、誰が見ても美しいと形容できる。 「ちょっと遅かったね、光(ひかる)。もう始まってるよ」 『相方』の雅人(まさと)が、空いた方の手で、ちょいちょい、と手招きをした。 クスリと笑い、かばんを玄関先に置くと、そのまますぐそばの洗面所に入る。 手を洗い、うがいをする。 共同生活をする上で、家に感染症を持ち込まないことは、とても重要だ。 鏡に映る自分の顔を、まじまじと眺める。 だらしなく見えない程度に短くしているくせのない黒い髪。印象の薄い一重まぶたと薄いくちびる。 いたって普通の、いつもの俺だ。
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