1章 いつもの火曜日(Side光)

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「お待たせ」 途中通過したキッチンで、雅人と同じようにグラスに麦茶を入れ、それを持って隣に座った。 「光、何かあった?」 テレビの画面から視線を動かさずに、雅人が聞いてくる。 ……相変わらず、勘がいいな。 何かあったかどうか、俺自身でさえ把握していないのに。 でも、確かに胸の中で、何かが揺らいでいることには間違いない。 「いや……どうかな」 曖昧に答えると、息だけで笑われた。 「また光は……。自分のことよく見てないんだから」 「雅人が見すぎなんだよ」 今度はふふっ、と笑い声が、雅人の口から漏れる。 「そうだよ。俺は、光のこと見すぎてる」 ポン、と頭に置かれた手のひらが、優しい温かさで俺を癒す。
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