1章 いつもの火曜日(Side光)

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でも、なんだって、俺は雅人に、こんな話をしているのだろう? 仮にも、今しがた身体を交えた相手だ――いや、正確には交わってはいないのだが。 何食わぬ顔で聞いてくる雅人も雅人だ。 しかし、こんな光景はあまりにも日常的過ぎて、俺たちの感覚はもはや麻痺している。 雅人にだって。 「尚宏(なおひろ)さんとはうまくいってるのか?」 「あぁ、ありがとう。大丈夫だよ」 にっこりと花が咲いたように笑う雅人は、本当にきれいだ。 きれいで、優しくて、理性的。 雅人の恋人である尚宏さんは、なんだって、こんな完璧な雅人を一途に愛せないのだろう。自分のことは棚に上げて考える。 尚宏さんにも、不倫の関係の恋人がいるらしい。 優しくて包容力のある雅人は、あちらでもこちらでも、恋人の恋愛相談に乗っているというわけだ。 恋人の恋愛相談。おかしな響きだ。 俺と雅人も、きちんと恋愛関係にある。 お互い言葉にして伝えているし、想い合っている確信もある。 おかしな関係。 でも、それが俺たちの日常。 .
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