2章 喧騒の日曜日(Side光)

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――礼二との出会い。 たまたま入ったバーのカウンターで隣り合わせたのがきっかけだった。 初対面からすぐに会話が弾んだ。 バーを経営していると言った礼二は、職業柄もあるのだろう、聞き上手であり、話し上手だった。 自分ではほとんどしゃべらず、相手の目を見て続きを促すように瞳で語る雅人とは違い、礼二は積極的に自分の話もしてくれた。 話の内容に引き込まれたのか、話術に取り込まれたのかはわからない。多分両方だろう。 話していくうち、お互い読書が好きで、ちょうど手持ちの文庫本が同じだということがわかった。 共通の趣味が判明し、ますます会話がはずんだのは言うまでもないが、たとえそれがなかったとしても、楽しい時間になったに違いない。 この街で出会う初対面の相手には、いつも警戒心の鉄条網を張り巡らせている俺が、一瞬も緊張することなく過ごせるなんて、奇跡に近い。 そんな相手には出会ったことがなかった俺は、この出会いを大切にしたい、とすぐに思った。
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