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バサ …
机に新聞を広げ、両手を机に押し付けて新聞を見下ろす男性がいる。
その男性は、白衣を着ている。足元には、丁寧に厳重に梱包された箱が三つ。どれも、宛名は共通して何処かの研究室宛になっている。男性は、鋏を手にする。そして、新聞をザクザク切り始めた。シュレッダーにかけるように、細く切ってから更に細かく小さく切り刻む。シュレッダーは使わない。音が煩いからだ。
ザクザク、ジョキジョキ、チョキチョキ、切り刻む。
その細かな紙を、小さな箱に詰めていく。幾つもの箱に、詰めていく。時折、粉末も一緒に詰めていく。白い色の粉末と、新聞の紙の色が混ざり合う。
とても細かく、緻密で、時間のかかる作業を、延々と続ける男性。
倉庫のような場所で、ただ一人で、作業を続けている。その場所の外の廊下は、静まり返って無人と化していた。誰もいない。足音も呼吸音も聞こえない、ガランとした空間。窓の外にも、誰もいない。一つ一つの扉の中にも、誰もいない。先程の男性以外、誰もいない。無人の建物。屋上にも、食堂にも、ロビーにも、エレベーターにも、階段にも、誰もいない。
ただ、ロビーの一角に貼られていたのは『本日のみ休館』の文字のみの紙が一枚。
一通り作業を終えたのか、先程の男性はロビーにいた。ロビーの一角に貼られていた一枚の紙を取り外して、小さく折り畳み、ポケットに仕舞い入れた。その代わりなのか、先程の紙が貼られていた箇所に別の紙を貼る。
そこに書かれていたのは、『一週間休館』という文字のみ。
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