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一週間は、何も変わらない。外見(そとみ)だけ変わらない。
一週間、一部の関係者だけが地下の駐車場を使い、地下の入り口の階段から建物に入り、階段を上がって三階のフロアの一室に入っていく。一室の扉には、『らぼ(ウインク)』の文字とイラストが描かれていた。
この『らぼ』は、何の変哲もない、変わり映えしない、ただの研究室。多角形に配置された机とパソコンと周辺機器類。その多角形に配置された机の真ん中辺りには、多角形の机が一つ。机の上には、卵の形をしたプラスチックの置物が一つ。
薄い灰色の壁と真っ黒な色の床は、落下という錯覚を思わせる色合いに。まるで、底無しのホールに落ちていく感覚になる。多角形に配置された机は、黒と茶色を組み合わせて、本に似せた色合いに。まるで、浮いた本がある図書館を彷彿させる。高所恐怖症には、悪趣味なデザイン。椅子は、机と同じ色合い。中央の机は深い森に似た深緑の色で、底に繋がっているかのような大木(たいぼく)に乗っているような錯覚を覚えてしまうデザイン。
凝ってはいるが、悪趣味なデザイン。使用する人達には、もう慣れたのかパソコンや資料に目を移し作業に没頭している。
「水、置いて置きます。」
そう告げて、人達の足元に水の入ったペットボトルを置いていく男性。
「今日も有り難う。」
その男性に気付いた、一人の男性が優しく微笑み、礼を告げる。
他の人は、誰も言わない。異様な空間。男性だけを空気のように扱う、異様な人達。一部の、いや一人の男性だけは不愉快に思っていたが。
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