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  水の入ったペットボトルを足元に置いてから、部屋を出ていく男性の後ろ姿が扉の向こうに消えた途端、作業に没頭していた人達が各自動き始めた。 一人は、背伸びをして。一人は、欠伸をして。一人は、ストレッチを始めて。 「彼奴がいると空気が汚れてく感じ。顔も黒いし。」 グフと、嘲笑う人もいる。 彼だけに声を掛けた男性は、眉間に皺を寄せる。掛けていた銀縁の眼鏡を、着用している白衣の胸ポケットに差し込むと、彼を追うように扉に足を向ける。 「 … 親しい知り合いってだけで、優しくするなんて。優しいのね、お兄さんは。」 明らかに小馬鹿にしたような、嘲笑い。 その声も無視して、扉を開けて外へ。廊下の角の窓辺に寄り掛かって、外を眺める男性を見付けて駆け寄っていった。 「全く、何の知り合いなんだか。ただの使い走りにしかならない、役に立たない奴を。何故、構うんだ?資料作りも下手、パソコン操作も下手、字も下手、コミュニケーションも下手。何もかも下手。口下手。酒も呑めない。」 他の人達よりも年齢の上な男性が、彼が置いていった水の入ったペットボトルを軽く蹴る。 「優しいのよ、根も性格も。」 真っ赤な口紅を塗った、ナイスバディな女性は微笑む。 「口説いても落ちなかったけどな。未だ口説いてんだろ?諦めたら?」 卑しく嘲笑う男性に、彼女は微笑む。 「あんたと付き合う気なんか、スポイト分も無いわ。安心して。」 キッパリ断られた男性は、それでも嘲笑う。目は笑ってないのだけど。
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