ハルの訪れ

春が訪れた

『清掃係の新人、ちょっとこっちにきてくれ』

副支配人から呼び出しをくらった。

呼び出されるようなミスはしていない筈。

副支配人は30代後半の男性。

スーツが似合う独身で、パート従業員からは『王子様』と呼ばれている程のイケメンさん。

副支配人がいるコントロールルームへと足を向けた。

『今日はここで私と研修だから』

このコントロールルームは防犯カメラの映像や各部屋の空状況がモニターに映し出され、万が一の場合に備える、防犯の砦。

副支配人に促されるまま、与えられた椅子に座り、モニターを見た。

私に課せられた任務は防犯カメラの映像解析。

犯罪を未然に阻止すると共に、従業員の就業態度のチェックをする。

チェックリストを手元に置き、カメラから送られてくる画像に目をむけた。

『チッ、またあの客だ』

副支配人がフロントのモニターを見ながら呟いたのを私の耳はキャッチしていた。