その咲きの向こうへ

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 律儀にゴミ収集所に捨てるだなんて、本当に人としての何かを守りたかったのだろうか?今まで居た社会を、日々を処罰と蔑んで忌み嫌っていた、そんなあの日をまだ引きずっていたかったのだろうか?きっとどちらでもあるのだろう。  ただ独り残されたというこの現実の中で、僕はまだその事実を完全に受け入れる事が出来なくて、以前の社会のルールを継承する事によってその欠落を気分的に補っていたに過ぎない。  依存症は急激に治らないという事だ。  黙々と作業を進める。  次々に食材をゴミ袋に入れて捨てに行き、戻ってはまたそれを繰り返す。  食材なんてもう必要ない、料理を作る人が居ないのだから。  今から料理を覚えるのも悪くないだろうとは思っが、料理を覚えるより早く、まずは出来合いのものを確保して消費していかないと既に作られた物達は時間的にとてもこの先持たない。  冷蔵庫と言うスペースに出来る限り既に作られ、日持ちする物を優先的に詰め込まなければならない。  これは僕の家だけではなく、近所の家にある冷蔵庫全てでだ。  僕はこの地域一体を僕の縄張りとして有効に活用しなければならない。  ゴミ出しの作業が終れば少し遠出をして、隣町くらいのコンビニやスーパーから弁当をしこたま持って帰ってきて、空いている冷蔵庫に入れるというのが僕の思いついたその場での最優先事項。
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